カテゴリー別アーカイブ: “若”旅日記

『芸を愛(め)で人に敬意を』坂田氏来る

先週、7月29日(日)の夜、石巻から畏友の坂田隆さんが南座に引き続いて文楽劇場に駆けつけてくださり、終演後、なんばウオークの『たこ梅』で談笑しました(彼は農学博士で、彼の大学に進学希望の生徒と親への説明会を兼ねての来阪)。
彼は、四つか五つの時、名古屋の御園座の楽屋で山城少掾に抱かれて以来の文楽フアンで、初舞台を踏んで間もなくの頃の私を妙に気に入られ、悪い舞台の時でも意に介さず期待し続けてくださっている、わたしにとって得難い恩人のひとりです。
今回、2部、3部と鑑賞した彼の印象譚はとても味わい深く、ボクはそれを思わず筆記したくらいです。
一介のオタクに陥らんところの『芸』に対する愛情がありまんねんやわ。
たとえ『山を動かすほどの信仰』があっても『愛』がなければ何の値打ちもおまへん(聖書)。

『玉女さん、良かった』

昨夜、阪本さんが3回目の来場。
玉女ちゃんのこと『簑太郎さんとは又違った良さがありますねえ。
特にバシッと決まった時など、オヤッと思いました』と言い、『ふたりとも溌剌としていて、見ていて楽しいです』とのこと。
勿論、勿論、玉男師の義平次の演技は圧巻で、型にハマリキッた伊達兄の面目躍如たる語り共々、非常にエキサイティングな『どろ場』の舞台の核を形成しているのは自明の理です。
『三婦内』の住大夫兄の語りも、これ以上ない雰囲気をかもしだしていて、もうたまりまへんなあ。
簑助兄もお辰役で出演されており、こんな記念碑的『夏祭浪花鑑』の一員に加えられ、神に感謝いたしております。
(サーバーの不調とやらで日記が1日遅れました)

『幻想としての劇空間』今日から玉女丸の出帆。

今日から『団七』は玉女ちゃん。
昨日まで積み上げて来た『ドロ場』の演劇空間を白紙に戻しての出発。
芝居村Aの共同幻想が成立した頃に別の芝居村Bから人がやってきたみたい。
こういう中日(なかび)替わりというのは、替わる本人にとって、実に嫌(いや~)なもんでっせ。
転校生みたいな気分です。
これから皆で無関心を装いながらも蟻塚のように、芝居の間(マ)を築いていかななりません。
玉男師匠直伝の、もう既に会得し開花し始めている『芸』を、いかに人前で晒すか。
玉女ちゃんの持ち味がきっと発揮されることでしょう。
勿論、『団七』の左遣い(玉志)も足遣い(玉佳)も交替してます。
玉女丸頑張れ。

『大胆は緻密の塊り』簑太郎君の芸

今夜も口上の時『英大夫!』の声がかかりました。
このお客さんかどうか判りませんが、ロビーで素浄瑠璃のチケットを売っている清丈君に『これを(高島屋の紙袋)英大夫さんに渡してください』との言付けがありましてん。
50過ぎ位の男の人でした、という清丈君から手渡された袋を開けると麻のスポーツシャツ。
『団七に感動し今公演に度々足を運んでいます』と添え書きがついていました。
『他の人の関連で楽屋にもよく顔を出して』いらっしゃるとのこと。
ホンマ、有り難いことです。
どなたが期待して舞台を聴いて下さっているかワカリマヘン。
きばらにゃあきませんなあ。
さて、簑太郎君の団七は今日で終わりました(明日からは玉女ちゃん)。
床から本舞台は見えませんが、右目の端の方で人形の動く気配は伝わってきます。
簑太郎君はボクが語る団七のコトバと状況を、卓越した人形の動きの渦中で把握仕切り、尚且つ玉男師の義平次との距離感やら感情の移ろいを緻密に獲得しつつ、ズバッと大胆に演劇空間の時限に己が魂魄を切り込んできます。
ボクの語りの間やら寸法を瞬時に飲み込み、先に息を使い、頭(かしら)や手足の動きをピタリとキメるんです。
スゴイ人でんなあ。

今日は劇場の休館日。夜、鈴木亜紀のライブに行く。.

中日(なかび)前後に一日休みの日が入る(大阪だけですが)と気が抜けるという方もおられますが、10年程前から始められたこの方針を、ボクは非常に喜んでおります。
張り詰めた緊張を和らげる大きな効果があります。
千秋楽まで一気に行くより、一回緩めるほうがボクにはいいです。
夜、鈴木亜紀(27、8の女性)という人のライブ(知人が企画)に行きました。
オシャレなショットバーに40人位の入り。
自分のオリジナルをピアノで弾き語り(歌い)する趣向です。
当方、日頃の疲れが溜まっていて最悪のコンディション。
2、3人の人に紹介されましたがボーッとしてたので、さぞ印象が悪かったでしょう。
さて、そのライブ。
歌を聴きながらほとんど寝てました。
廻りには熱心に聴いている若いファンがいましたから、さぞかしボクは彼等にとって、嫌なおっさんだったでしょう。
しかし、ラストの一つ前の『たそがれ』という曲とアンコールで歌った曲は光るものがありました。
眠気が覚まされ、ドキッとしました。
あと一つ光る作品が出来たらこの人、ゼニが稼げる気がします。