素浄瑠璃「持余屋の段」

5月の東京公演中からボチボチひとり勉強しはじめていた。
何せ初役。
笑いをとるのはある意味、泣かせるより難しい。
だじゃれことばを発する瞬間は凍りつくものだ。
6月半ばから清介さんと稽古をはじめた。
枕のあと、大工のやりとりで声を枯らした。
なれてきて、舞台稽古の前の日に初めて声がぶっぱなせた。
嶋大夫兄のお稽古で目から鱗が落ちたような気がします。
うまくやろうとか笑いを取ろうとは別に、自然で大きな発声ができれば御の字という気概で本番に臨んだ。
ビクビクながら、わかりやすくかるく大きくと念じた。
オヤオヤ!?枕すぎ、大工のところから笑い声の反応があった。
勇気付けられた。
最後まで場内の笑いは途切れることはなかった。
僕がリスペクトしている落語評論家の山田りよこさんが、御自身のブログ「楽マガ」で当日の感想を述べておられる。
許可を得て転載させていただきます。
以下です~

豊竹英大夫の「人間詞長者気質~持余屋の段」は、素浄瑠璃だけで残ってる稀曲の上演がうれしい。
力まず、歌うような、楽しんでいるような英大夫の大真面目な金満話に大笑い。
上方商家にあるまじき金のふるまいようは、大ボラを通り越した痛快さと逆手に取った可笑しさがあふれ、誠に愉快なひととき。
英大夫の豊かな表現と息の合った清介の三味線で物語にひきこみ、長者兵衛や盗人らは人形さえ思い浮かび、これは、人形入りで仕立て直し上演されても人気が出るのではないかと思うほど。
滅多に聞けないのがもったいなく、面白味で幸せな気持ちにしてくれました。