MFさんより、その三。

さて、もう一つは… 実は順序が逆になってしまいました。
通常「寺子屋(前)」として、「寺子屋(後)」とは別の方が語られる部分です。

驚いてしまったのは、英大夫さんの格式ある語りです。
こんな事を書いては大変失礼なのですが、英大夫さんでこれ程まで格調の高い語りは、今まで拝聴した事がありませんでした。

「これはもしや?!」と思い伝統芸能データベースで確認してみました所、 切場語りの方が(前)をつとめられている公演がいくつかみられました。
泣き笑いやいろは送りという聴かせ所にうっかりしていたのですが、 この(前)の部分に時代物としての格がしっかり語られていないと寺子屋という段は成立しないという事が、お一人で語られた事で初めて理解できました。

(自分が発見したかの様に仰々しく書いていますが、文楽知識としては当たり前かもしれません…)
そして最後になりますが…実は私、まだ語りが終わり切っていない段階で起きる早めの拍手が余り好きではありません。

寺子屋が語り終わるその直前、いつも通りのタイミングで拍手が起こりました。
しかし今回、この慣例のタイミングで起きた拍手に、観客の多くがつられる事はありませんでした。
パラパラと起きた拍手はそこで鳴り止んだのです。
そして、いつもよりゆっくりと引かれている幕が残り四分の一になろうかとした時に、大きな拍手の波が起きました。

能公演では、素晴らしい演能の場合に拍手ができない事が時々あるのですが、文楽では初めて出会った現象でした。

この拍手と幕引きは本当に素晴らしく、舞台の感動の余韻を充分に楽しむ事ができました。

個人的意見ではありますが、多くの演目がこのタイミングでの拍手と幕引きになってくれる事を願っています。