桂川あかねさんからメッセージ

桂川あかね様から感動のメッセージをいただきました。シェアさせていただきます。

18日の祝日に「初代国立劇場文楽最終公演」の第二部に行って来ました。いよいよ文楽が国立小劇場で公演するのはこれが最後。
一部と二部は五月から続いた通し狂言「菅原伝授手習鑑」の三段目〜五段目の上演ですが、二部の頭には最後の公演を寿ぎ締め括る「寿式三番叟」が上演されました。能の「翁」を文楽に移した儀式性の高い演目です。「翁」の荘重さは残すものの、躍動的な三番叟の人形の活躍が見所。詞章もだいぶ砕けて「田植え歌」や「祝詞尽くし」など式楽が庶民の間に入って変遷した姿が興味深かったです。
「翁」は咲太夫さん休演のため呂太夫師匠が勤めるられました。国立劇場開場記念の折の「翁」は祖父の若太夫が勤められたとのこと。来年若太夫襲名が決まった呂太夫師匠には思いがけない巡り合わせとなりました。
座頭が勤める翁面を掛けた神格化されたお役ですから、たぶん口伝もいろいろあることかと拝察。呂太夫師匠は声も良く通り、重みもあり「天下泰平国土安穏」の祈りも真っ直ぐに伝わって大変良かったです。太夫、三味線、人形とすっかり若返った顔触れに文楽のこれからの希望を感じました。
三部構成でせっかくの通し狂言「菅原伝授手習鑑」ながら私は最終部だけの鑑賞でした。四段目「寺子屋」前後の「北嵯峨」と「大内天変」は実に51年ぶりの上演とのこと。若手には大変良い勉強になったかと。
希、亘、小住と呂太夫一門が元気よく大活躍でした。それにしても若手が皆プレッシャーに負けず与えられた役を精一杯に勤めている姿は清々しいです。
呂太夫師匠は「寺子屋」前、源蔵戻りからの刻々と変わる心理描写は本当に息が詰まります。戸浪の苦悩も見ていて辛い。緊迫の松王丸登場から一転チャリ場となった後に迎える「首実験」最大の山場。まさに義太夫と三味線の一騎打ちの迫力だからこそ可能な表現、呂太夫師匠と清介師匠は一段と冴えてました。
後は呂勢太夫さんと清治さん。松王丸の泣き笑いの複雑、いろは送りは三味線主導で涙涙の幕切れ。名曲の所以、誠に良く出来た一段です。
勘十郎、玉男さんの花形は出られませんでしたが、人形はどのお役も皆さん大変に誠実堅実に勤められました。源蔵役の玉也さんにふと先代玉男師匠の面影が、ああ、この劇場で半世紀前には明治生まれの師匠たちがご活躍だったのでした。数多くの名人たちを思い出し「初代」国立劇場との名残りを惜しんだひと時でした。

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