カテゴリー別アーカイブ: “若”旅日記

『古典とロック』公演の切符がSOLD OUT

今回私が出演している『長町裏の段』は三部(6時30分開演)の最後の場面で8時10分に始まり、終るのが8時45分頃です。
真っ直ぐ帰宅して10時です。
舞台が終ったら大体ボーッとしてますから、日記を書くのは次の日の朝になります。
毎日書くの大変でしょうとよく言われますが、大変は大変ですが、けっして書くのが嫌いではないんでしょうなあ。
いままで50年あまり書けなかった日記をこういうかたちで書かせてもらえ(まだ5ヶ月位ですが)、皆様に感謝してます。
ところで9月24日の『古典とロック』公演(国立小劇場)の切符が昼夜共売り切れたそうです。
主催者というのは(ゴスペル文楽の時もそうでした)、0枚からのスタートで始めから勢いよく売れるわけではないので実にヤキモキします。
ですから最初の不安な時に1枚でも買って下さった人のことはよく覚えているもんです。
エエかいな売れるんかいな、と思っているうち、加速度がついてウワーッときます。
とにかく、2ヶ月前に売り切れるなんて、こんな嬉しいことおまへんやん。
5月21日の日記に『ロック曽根崎』について書いてます。
お読みくださいませ。

夏公演初日。『あ~ちめた(冷た)。兄、ワリャ、オレを斬りゃがったナア』

ポテンシャルというのは平板なもので、それを立体的に蹴りを入れて構築するには、音声のもつ深層の触感を揺るがす特色、鍛錬された脱音階の節の唸り、幾重にも重層し共鳴する太棹の剛柔音色、男三人が旧石器時代から繰り返し温めてきた視覚を幻惑魅了する農耕狩猟の秘伝のムービング…日記を書こうとしてアイモードを握りしめながら眠っていたら、訳のわからんイメージが夢うつつに尿意と共に湧いてきて、目がさめました。
今、22日の明け方。
昨日、初日が開きました。
義平次が団七ともみ合った際、耳にかすかに団七の刃を受け、血がたらり流れます。
暫らくして、したたる血に気づいた時の義平次(伊達大夫兄)のセリフ『あ~ちめた』の間(マ)と響きが、ホンマによろしおます。
お客さんの反応も上々。
芝居っつうのは、悲劇や喜劇を超えて、いろんな味わいがおまんなあ。

勇気ずけられるひとこと

小松大夫兄は今公演、『金太郎の大ぐも退治』と『住吉鳥居前』の稽古を担当されており、今日の舞台稽古にもお見えになりました。
一昨日の立稽古の時『どろ場』も座席から聞いていて下さり、今日、色々その時気がついた注意をして下さいました。
最後にひとこと『そやけど、悪なかったで、声も前に通ってたし』とゆうて下さいました。
こういうひとことには非常に勇気ずけられるものです。
『大ぐも』にも『鳥居前』にも前向きで肯定的な意見を述べてられてました。
萎縮してたらエエもんは出まへん。
特に私は人前では明るく振舞ってますが、実は内向的で気が弱く、人一倍『気にしい』ですので、内憂があるとあきまへん。
舞台稽古が無事終わりホットしてます。
団七の簑太郎(玉女ちゃんは後半日程)君もよう頑張ってます。
なにせ相手役の義平次が玉男師でっせ。
ボクも義平次の伊達兄、三味線の寛治兄に囲まれ贅沢なことです。
今回の演出では、ツメ人形がかつぐ神輿が花道から出てきますが、これがなんとも幻想的で、絵になってまんねんやわ。

初日が開(あ)くまでの緊張と、『場』の共同幻想の成立

舞台稽古近辺から初日の幕が降りるまでのあいだの緊張感というのは何とも言えまへんなあ。
いやなもんです。
初日が開いて十日ほど経てば、舞台での発声感覚も掴め、その場の共同幻想的人間関係も成立し始め、何とはなしに『演じるヨロコビ』みたいなものが湧き上がってきます。
闇雲な感じの初日と、カチッとした冷静さが生じる中日(なかび)過ぎ…エライ違いだっせ。
初日は云わば怪我して血が吹きだした状態。
蓄えた自己免疫力を駆使し、薬を塗り包帯を巻いて必死に日常性を取り戻す努力をする。
傷が治まりカサブタがとれ始めるのが中日過ぎ。
しかし厄介なことに、その初日がエエというひとがようけいてはりまんねんがな。
明日は舞台稽古。

凄惨で、尚且つ『粋な』…

『どろ場』の立稽古は4時50分からのスタート。
朝からイライラっちゅうかドキドキっちゅうか、いやな気分でした。
ムツッとしてまんので家族とか周りのものにはさぞ迷惑な話でっしゃろなあ。
3時から伊達兄、寛治兄と5階の稽古場で一回稽古して少し落ち着きました。
久しぶりに楽屋に小松大夫兄がお見えになり『雄ちゃん(ボクの名)、団七やってて気持ちエエやろ』と言われ、『とんでもない、コワイですよ兄さん』と答えましたが、兄が初役で団七を勤められたとき、人形は簑太郎君の父親の勘十郎師でした。
前の日記(4月19日)にも書いたように、義平次が玉男師で小松兄も声がバリバリ出て(伊達兄がやはり義平次でメチャ好演)それはそれは壮絶凄惨で、尚且つ『粋な』ドロ場でした。