『義経千本桜道行』での拍手考。

道行の始まり。
太夫五人三味線五人の合奏。
舞台にはまだ紅白の幕。
しばらくすると三味線だけの演奏になり、そして、四枚目太夫の『し~たいゆ~く~ 』。
その時、紅白幕がヒラヒラ舞い降り、吉野山の『千本桜』の光景が目に飛び込む。
すると必ず拍手が沸き起こる。
しかし、ぼくが入門したころ(S43)は、道頓堀の朝日座でも三宅坂の国立劇場でも、拍手はそんなところではなかったように思える。
拍手はその少し前にあった。
紅白の幕が払われる直前に三味線の派手な合奏がある。
その合奏の中途くらいでどこからともなく自然に拍手が起こり、会場全体の大拍手になっていった。