『生玉の段』(弥三郎)を寛治兄に、お稽古してもらう。

南座で二日間だけ勤めるだけやからと、タカをくくっていたが、ナンノナンノ目から鱗が落ちた稽古だった。
幾度となく越路師匠にもお稽古してもらい、何十回となく勤めていても、舞台にかける時は初めの一歩だ。
むしろ、段々難しくなる。
丁寧に口伝を教えていただいた。
なにせ、作曲者の野澤松之輔師直伝。
しかも初演の三味線は、兄にとって父親にあたる先代寛治師(太夫は津大夫師)なのだ。
人生、どこに宝が転がっているかわからない。
口や態度だけは謙虚さを装ってはいるけど、心のどこかに思い上がりのある証拠だ。
人生、ホットした時がいちばん危ない。
気ィつけんとアキマヘンナア。