ボクの本当の初舞台は、昭和43年1月末の朝日座でした。

役は、若手向上会での『忠臣蔵・一力茶屋場』の「力弥」でした。
由良の助が十九兄、おかるが小松兄、平右衛門が咲兄で、「力弥」の人形は紋十郎師匠に遣っていただきました。
『勘平切腹』は呂大夫兄が語ってられました。
朝日座の4階の日本間の稽古場で先代の喜左衛門師匠に全員揃って稽古していただきました。
小柄で飄々とした着物姿の師匠が下駄を脱いで襖を開けられた時のあの、カッと見開いた《眼》の形相は、未だに忘れることはできません。
あの、張り詰めた雰囲気・・。
ホンマに昨日のような感じがします。
さて、今日は小松兄に4月の役のお稽古をしていただきました。
「又助住家の段」の端場は以前、小松兄が何十年ぶりかで語られたものです。
その時は、寛治師匠にかなり熱心にお稽古していただいたそうです。
今日の僕はただただ小松兄の作品に対する思い入れと集中力にたまげておりました。
自分の甘さを痛感しております。