床の小幕があがり口上が始まる。
こちらを見るお客様の顔がにこやか。
大勢の視線がこちらに向けられている。
気持ちが自然に昂揚してきた。
音響よく、清介さんの三味線も冴え渡った。
すべてはお客様が与えてくださるのだ、と実感した。
素浄瑠璃の一回奏演と違い、人形浄瑠璃「合邦・奥」17回実演はまた、大きい財産になります。
さて、以前、文楽の三味線弾きだったAさんが楽屋に見えた。
会場まで乗ったタクシーの運転手さんから小耳にはさんだ話だが、新潟市巻町(マキマチ)は原発反対運動を成功させた町だとのこと。
たしかAさんは巻町出身ではないか!早速、当時の様子を聞いてみた。
町の名士である彼の父親は反対派だったが、原発推進派からの攻撃は凄まじかった、という。
電話での脅しは日常的で、「お前のところには娘がいるやろ。
何時何分頃あそこを通るのわかってる。
えらいめに合わせてやるからな!」。
こんな類いの連続。
もし実際僕らがこんな電話を受けると縮みあがりまっせ。
しかしそんな攻撃にも屈せず反対派の人たちは団結し、原発用地をひと坪ずつ買い上げたりして原発を撤退させた。
今回の福島事故の二十年も前の話でっせ!巻町の文化力に敬意と脱帽を表します。