人間は死んでも生きている。「竹本貴大夫君」

竹本貴大夫君、本名南波尚氏は3年前の今日、なくなった。
彼は僕のひとつ歳下。
僕が23歳の時、越路師匠の門下に入ってきた。
内弟子として互いに3年、頑張った。
互いにというより、彼ひとりが内弟子として頑張ってくれた。
彼がくる前の一年間、僕は内弟子修業がしんどくて、マジ、文楽をやめて小説家になろうとしてた。
彼が僕に変わって師匠の身の回り炊事洗濯拭き掃除をせっせとしてくれたおかげで今の英大夫がある。
これは事実。
しかし、あのとき僕が文楽をやめていれば今ごろ日本には大江健三郎に次ぐ、ノーベル文学賞賞作家が生まれていたはずかもしれないが。
それはさておき、貴大夫君は冥土で僕のことをずっと見守ってくれている気がしてならない。
今夜は特にそう感じた瞬間があった。
人間は死んでも生きている。