能「隅田川」&、斎藤さんから。

水道橋の宝生能楽堂へ能「隅田川」(シテ・山本順之、地頭・野村四郎)を観にいく。
順之師の狂女に感銘を受けた。
女性のすすり泣きが聞こえた。
帰り、近くの中華屋で同行の桂川、薄井、山之内、吉岡夫妻、斎藤さんらと会食。
ほっこり過ごさせていただいた。
それから今回、嬉しいことに数人の方から感想が届いてます。
そのなかのひとつ、斎藤俊太様からのお便りを紹介します。
ご覧ください。
→  「岩木忠太兵衛屋敷の段」は、スペクタクル性のあまりない段とは言えますが、「妻敵討」とはどういう悲劇なのかを伝える大切な場面。
この段を端正に語っておられました。

我が娘を「畜生」と言わねばならない老親。
父が母を無事連れ帰ってくれる、と信じている子どもたち。

前段の高揚が、実はこういう悲劇を招くものだったというその「現実」が抑えた調子で語り出され、悲劇が形となって現れ、心にしみました。

哀れなのは、お雪…。
権三は別に好きでもなかった人と通じたことになり、討たれることに。
兄は殺されるし。
もう、散々ですね。
しかも、語られないし…。

皆を悲劇に巻き込んでいく、おさゐの情熱。
嗚呼、「油壺から出たような、しんとろとろり」の権三のいい男振りは罪作り…。

妻敵討場面と盆踊り場面を重ねるという設定。
これはもうお見事!憧れの年下イケメンと死出の旅路に急ぐおさゐの高揚感を語り、死にゆく二人への手向けでもある盆踊り。

← 俊太さん、ありがとうございます。
権三のワキの甘さと出世欲、それを巧みに衝いたおさゐ。
おさゐの心には誘惑という言葉はない。
これがコワイ。