文楽熱狂歴いち年はんの米良京子さんからのエッセイ。

『歌舞音曲には疎いし、観る度たいていの演者を凄いと思ってしまう。
ただただあの空間に浸る事が好きなだけな』米良さん。
正月公演初日には、『文楽指南役の』三村百合子さんと着物でヒコーキに乗り、大阪へ。
この九月公演のある日、今までにない不思議な体験をされたとのこと。
以下、彼女からのエッセイを抜粋。
その日、『何かがすとんと、まっすぐに私の胸に入ってきた』『涙が溢れるのを止める事も出来ず呆然』『泣くような場面じゃないのだ。
ただ分かったのは、決して物語に感動したのではないし、自分の生活や状況がお種(紋寿師)とシンクロしたとかそういうのでもないということ』『ただ、たまたまその時、演者の発する気の波動と、その時の私の波動とが合ってしまったとしか思えない。
その時、見えない何かがまっすぐにささった』『舞台と客席との境目あたりで、両者が次第にとけ合ってゆく感覚.私はそれを味わったし、今もそれを否定はしない。
だがしかし、時折ピンポイントに、舞台の個から客席の個へと刺さっていく一本の線があることを、今日悟ったような気がした。
(つづく)