いまのところ、高い音域が出てるから、少しは安堵している。
しかし、中日(ナカビ)過ぎから東京公演の『姫戻り』と『万代池』の稽古が始まる。
声調が変化するのがコワイ。
喉は三味線の皮みたいに張り替えがきかない。
大夫の宿命か。
今回の道行の梅川のサワリ、とてつもない高音域の箇所がある。
『のうこれ申しさりとては♪』の『のうこれ申し』なんか、文楽であんな高いとこ他にないんちゃうかなあ。
実は、嶋大夫兄のお稽古で、大切な教えを受けたのだ。
兄のお稽古の前、僕なりの作戦として、『のうこれ申し』の『の』は裏声、『う』は表声、『こ』は裏、『れ』は表と区分けした。
サワリの最後の『死にたい~♪』も、『死』は裏、『に』は表、『た』は裏、『い』は表という具合に。
しかし、嶋大夫兄はすべて表声で突っ張れ、と仰った。
で、お稽古の最中、突っ張って語ってみたが、頭真っ白の緊張もあり、まったく出やしない。
『出ないと思うから出えへんねんや。
出ると思って語れ』との注意を受け、『出ると思って』語ってみた。
ほんなら、出たんですわ。
このお教えがなければ、今ごろ、これでいい、と妙に納得して、空かし声を出していると思います。
ほんま、有難いことです。