喜左衛門兄(68)急逝

喜左衛門兄が、18日(日)の早朝、亡くなられました。
僕は兄に可愛がってもらいましたなあ。
兄とは、何の垣根もなかった。
ええひとでした。
兄の口からひとの悪口をきいたことなかった。
先代の綱大夫師匠がある時、兄の芸をいたく褒めてはったのを覚えております。
僕の祖父若大夫も兄のことをとても気に入ってました。
兄に初めて子供さんが誕生した時、僕の祖父と祖母は兄の家までお祝いに行った。
『若大夫師匠がおばあちゃんと、わざわざ大きなオモチャ持って家まで来てくれたんや。
ビックリしたで、もう。
』と、よく聞かされた。
『嬉しかったけど、若大夫師匠、女はなあ、子供を作る機械や、と嫁はんの前で言うんや。
面食ろうたわ。
』。
厳しい文楽の世界を支える嫁はそんな覚悟がなければ勤まらないとの、無骨な明治男の精一杯の『気イ遣い』の言葉だったんや、と理解する。
越路師匠は兄の奥さんのことを常々『ようでけた、ええ嫁さんや』と言っていました。
その奥さんと昨夜、お通夜で焼香の時目があいました。
もう、たまりませんでした。