映画『夫婦善哉』

映画『夫婦善哉』(昭.30、森繁・淡島)のDVDを見た。
原作の解釈がよくできている、素晴らしい作品だ。
ポイントは、柳吉の見舞いにきた義理の妹から言われた言葉『姉はんの苦労はお父さんもこの頃よう知ったはりまっせ。
よう尽してくれとる、こない言うたはります』。
そして、自殺未遂してからの蝶子の変容。
成長でも諦観でもなく、脱皮に近い人生に対する目覚め。
いわば、この世の不条理を条理だと悟る蝶子。
蝶子が『人間』役としたら、柳吉は人間を取り巻く『環境』役や。
映画の脚本は小説の性根をよくとらえている。
リアルであり愉快である森繁久弥の少し生硬な演技が秀逸。