能における『アイ』の役割。

いつも思うことだが、能における『アイ』の役割は画期的なものだ。
昨夜も能演の真ん中くらいに『アイ』の茂山正邦が鳴門の浦人としてスタスタ舞台中央に出てきて正座し、朗々とした狂言コトバで『通盛』のあらすじ解説をする。
結構、長い。
こういう演出って、一見、単純なようではあるが、古典芸能の切り口の凄さを垣間見るのだ。
『アイ』とは、間狂言(あいきょうげん)のこと。
能の前場と後場の場面転換と、シテの変身=着替えの時間をつなぐ役割。
大抵は狂言師=アイの一人語りで曲の背景やシテのエピソードが語られる。
最低15分はタップリ語るのだから大変な労力。
能によっては複数人による狂言一曲が挿入される場合もある。
「通盛」の場合、曲中では秘められている通盛と小宰相局の馴れ初めが『アイ』によって明かにされ感動的だ。