掛け声。朝日座の頃。床から垣間見るお客様。

今夜の舞台。
口上のあと、床本をあげたところで掛け声がかかった。
待ってました英大夫!の名調子。
アレ、吉朝さん?だ。
と確信。
案の定終演後、吉朝さんが楽屋に顔を出された。
先週は彼の弟子の吉坊が楽屋にきてくれたし、吉朝一門、いや、米朝一門は皆、文楽通いに熱心である。
トップの師匠の感性が弟子に伝わるものだ。
亡くなられた枝雀師が弟子のべかこ(今の南光)さんを連れてよく、道頓堀の朝日座に顔を出されていた。
その頃の朝日座の夜の部など、舞台に出てる人形使いさんや掛合いの大夫や三味線弾きさんの数の方がお客さんより多かった時もあるくらい。
先代綱大夫、越路大夫、津大夫、先代寛治、先代喜左衛門、紋十郎、先代勘十郎師ら御健在の時分である。
さて、今夜、語り出そうと床本をめくった時たまたま視線の先に、正月の『新現役ネット文楽鑑賞会』に出席された西村寅雄夫妻が見えた。
思わず目だけで会釈を交わした。
昨夜も『囲む会』の江口寿一夫妻と目が合った。
こんなことは珍しい。
ふた組とも花外楼の素浄瑠璃会にもおいでくださったし、誠に嬉しいかぎりだ。